旅行医学は渡航医学とも言い、旅行に関わる病気やケガの予防と治療を扱う新しい医療専門分野のことで、伝染病予防接種などをはじめ、海外旅行や海外赴任で直面するさまざまな医療トラブルに対応するための知識や情報対処法を扱う。具体的には「どの予防接種を済ませるか?」「現地で信頼できる病院は?」「日本からどの薬を持っていくか?」「現地で流行している感染症は何?」「輸血が必要になったらどうするか?」などがある。
疫学・感染症・公衆衛生・熱帯医学・高地生理学・旅行関連の産科学・精神医学・産業医学・軍事医学・移民医学・環境衛生など。
主要分野としては、予防(予防接種/生活指導)、支援医学(治療)、辺境地医学、保険医学など。
内科に専門の外来を設置している総合病院もある。
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旅行医学は、まだまだ聞き慣れない言葉だが、今では年間1800万人近い日本人が海外に出かけるようになった。また海外に赴任したり在住している日本人(在留邦人)も100万人近くに増えてきた。その反面、毎年200人近い中高年の旅行者が、脳卒中や心筋梗塞で命を落としている現実もある。旅行中、万一ケガや病気に遭遇したとき、慌てず、命を落とさないための現地の情報をあらかじめ把握しておくことは重要だし、見過ごしているリスクを知ることによって事前に予防することができ、結果として安全で楽しい海外旅行ができるようにするものだ。
身近なところでは、「時差ぼけ」や「ロングフライト血栓症(エコノミークラス症候群)」の防ぎかた。英文診断書の作成依頼のしかた、海外旅行保険の落とし穴など、あまり知られていない情報も含まれる。また、海外では緊急の場合の診療を拒否されることが多く、日本人は驚くことが多いが、これはインフォームドコンセントによる患者の情報が十分に提示されない患者に医療事故が起きた場合の保証問題を回避するという理由がある。こういう問題を避けるためにも事前に、自分の詳しい医療情報を英文化した診断書の作成が重要だ。
また現地で日本語のわかる医師を捜そうとするがゆえに診察を受ける時間が遅れ、命を落とすことになるケースも多い。そして輸血はエイズ等のチェックが十分とは言えないし、先進国でも副作用などのリスクが大きいのでできるだけ避けたい医療行為のひとつだ。輸血拒否の文章の入った英文医療書類は命を守る重要な書類で、これは欧米ではAD(自分の医療希望書)と呼ばれ広く普及している。
海外旅行中の死亡の最大の原因は循環器系の疾患で、死者の半数以上を占めている。続いて外傷や事故が25%程度で、恐ろしく感じる感染症は2.8〜4%にすぎないが、該当地域に渡航する場合は、予防接種をはじめ、事前に十分な情報を得ていることが必要だ。注意する点は次の6つ。1:虫刺され(虫除け, 蚊帳, マラリア予防薬など)2:食中毒 3:分別ある行動(HIV, 性行為感染症)4:外傷 5:水際での注意(住血吸虫症)6:旅行保険
「黄熱病」はアフリカや南米の一部地域で流行している。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のサイトで危険地域やワクチンその他の予防法についての情報が得られる。
「髄膜炎菌髄膜炎」はアフリカの「熱帯髄膜炎菌地域」で流行が見られる。メッカを訪れる巡礼者には予防接種が義務付けられている。
「マラリア」予防には、蚊との接触予防(網戸・エアコン・蚊帳など)と、虫除けスプレーが用いられ、抗マラリア剤による予防を行う場合は旅行前から服用を開始し、帰国した後4週間〜7日間まで飲み続けることで十分な効果が得られる。
旅行の際には、リスクに備えて持っていくと役に立つ薬がある。行き先や状況にあわせてマラリア予防薬・コンドーム・旅行者下痢症の治療薬・応急手当セットなどを用意する。